【事例紹介】

広島の住まいづくりマガジン「自遊建築」事例紹介テーマのある家:風流に暮らす

風流に暮らす/奥ゆかしき日本の風情が息づく、現代的な隠れ家。


H邸の玄関。ちょっと見ただけでは、一般のお宅かお店か
迷ってしまいそうだ。石畳や植木が、家人やお客様を優しく迎え入れてくれる。

外からは閉じているが、内からは開いている。落ち着ける料亭のようなイメージですね。

プライベートな感覚を保ち、のびのび暮らせる家が欲しい。

風流という言葉を辞書で引くと『上品な趣があること。風雅。世俗から離れて趣味の道に遊ぶこと』とある。H邸には、その言葉がとても良く似合う。住宅街の中を歩いていると、今時珍しい木の塀と建物へと続くほっそりした石畳の路地があり、塀と木々の隙間からひっそりとした佇まいの建物が垣間見える。まるで、看板を出していない”知る人ぞ知る料亭“なのだろうか、と思わせる雰囲気を醸し出している。

この家に暮らしているのは、若いご夫婦と子供の三人家族。ご主人のご両親が住む家の隣に家を建てることになり、建築家に依頼した。その家づくりを監修した建築家である黒川氏にお話を聞いた。

「お客様からの要望は、住宅街ということもあり、周囲から家の様子が見えないようにしたい、ということでした。それで、外からは見えずにプライベート感をしっかり保て、なおかつ内側は開放的でくつろげる空間にしようと思いました。コンセプトは『光と風の通る家』としました。具体的なイメージは、しっとりとした風情のある料亭のような家ですね。ただ、まだお若いご夫婦なので、純和風ではなく洋風の軽やかなテイストもミックスさせ、”現代的な和風の家“といった感じに仕上げました」と、黒川氏。


広々としたリビングは、天井も高く開放的。ゆったりくつろげる空間だ。

世俗との境界であるかのような、品格を感じさせるアプローチ。

豪華な花よりも可愛らしい小花が似合う雰囲気のH邸。

隠れ家的な要素を最も漂わせているのは、玄関アプローチだ。階段状になった石畳は、玄関というより路地という呼び名の方がふさわしい。一段昇るごとに、煩わしい俗世から切り離されていく。

路地の先は折れ曲がり、右手が玄関となる。これは、玄関を出入りする姿が外から見えないようにという配慮だが、その隠された感じが、この家の神秘さとなり、”隠れ家“といった風情を生みだしている。塀の内側に植えられた木々も、外からの視線を柔らかく遮る目隠しであるが、この家の内側の豊かさを外側から見る人に伝えているかのようだ。そして、わずかしか垣間見ることのできない住居が、多くのことを物語ってくるから不思議だ。