【事例紹介】

広島の住まいづくりマガジン「自遊建築」事例紹介テーマのある家:清涼に暮らす

清涼に暮らす/日本の気候に合う伝統工法を取り入れた、一年中快適な家。


スッキリとして感じの良い玄関。引き戸タイプなので開閉時に扉が場所を取らず、人が出入りしやすいのが良い。

すのこ状になった玄関扉から明かりがもれ、石畳を照らす。美しい日本の風景がここにある。

段差のある土地に家は建てられないと言われて。でも、どうしても削りたくなかったんですよね。

引退した途端に起きた災難が、家づくりの始まりだった。

この家の女主人であるYさんは、とても早起きだ。実家のお母様が起業したガソリンスタンドで、朝の6時半から夜の8時半という長時間労働を30年以上続けたという働き者でもある。結婚後、早くに他界したご主人の分も頑張って働き、二人の子供を育て上げ、数年前に、50年も続いたガソリンスタンドが廃業。引退して、これからのんびり暮らそうと思っていた矢先、自宅が災害に遭い、取り壊しを余儀なくされたのである。

「ショックで落ち込みました。でも、いつか家を建て替えたいという想いはあったので、今となっては逆にいい機会だったのだと思います」とYさん。思わぬ災難、それが家づくりのスタートだった。  重い腰を上げ、住宅展示場やモデルハウスを見てまわるが、営業マンがすぐに飛んできて結論を急がせるのにうんざり。知人から「建築家に設計、監修してもらうといい家ができる」というアドバイスをもらい、建築家を探すかたわら家づくりに関する勉強を始める。というのも、Yさんには長年にわたって悩まされ続けた問題があった。結露だ。山あいの盆地であるこの地方は冬が寒く、Yさんの家では結露が凍って拭き取れない時もあったという。

落ち着いた雰囲気のY邸。窓一面に取り付けられたウッドデッキは、懐かしい“縁側”という表現の方が似合いそうだ。

こぢんまりとした快適な家を。夢を託せる建築家との出逢い。

「もう結露に悩まされるのはたくさん。こぢんまりとした小さな家でいいから、一年中さっぱりと快適に暮らしたい」というYさんの希望は、結露が発生しにくいこと、風通しが良いこと、収納が多いことの3点に絞られた。

その頃、親戚が建築家に依頼して家を建てたと聞き、家を見せてもらうことに。Yさんの建てたい家とは全く違う、大きな二世帯住宅だったが、自分たちの希望が随所に取り入れられた雰囲気が感じられ、「私が求めていたのはこれだ!」と直感し、早速その家を建てた建築家を紹介してもらった。

教えられた連絡先に電話したYさんが、遠慮がちに「外断熱の家は建てられますか?」と聞くと、すんなりと「できますよ」という返事。それで、この建築家の人に自分の話を聞いてもらいたいという気になった。

断熱には、建物の内側に断熱材を入れる「内断熱」と、建物の外側を断熱材ですっぽりとくるむ「外断熱」があり、一般的な住宅は「内断熱」であること、結露を防ぐには室内の温度が一定に保てる「外断熱」が良いらしいが、広島には取扱いできる業者が少ないらしい…Yさんが素人なりに得た知識だったが、プロである建築家はなぜそうしたいのかを熱心に聞いてくれた。


「以前の住まいには玄関らしきものが無かったので、立派な玄関が憧れでした」というYさん。

電話して一週間後には建築家がYさんを訪問し、要望を一通り聞き、家を建てる予定の土地を見て帰っていった。約一カ月後に提案された建築プランは、満足のできる内容であった。

「例えば、将来は子供の家も敷地内に建てたいと言えば、だったら建てた時のことも考えて上からの明かり取りもしていた方がいいですね、とか。希望を超える配慮が感じられました」と、嬉しそうに笑うYさん。

さて、先程の断熱であるが、Yさんと建築家が出した答えは、外断熱でも内断熱でもなく、「土壁を断熱材として使う」というものであった。